元気を発信する~福島、相馬・南相馬の旅~|旅人:安田美香
2016-07-22
旅人の安田美香です!
東日本大震災から、5年。
あの時私は東京で、0歳の赤ちゃんを抱えて子育ての真っ最中でした。
福島の様子をTVやラジオで見て聴いて…言葉を失いました。
私はショックで母乳が止まってしまい、「のみたいよー!」と泣く赤ちゃんをあやしながら、
なにもできない自分の小ささを感じていました。
全国のママさんたちがみな、そんな想いだったと思います。
その時、心の中で決めたことがあります。
「今はこの子をしっかり育てよう。そしてもう少し子どもから手を離せるようになったら、福島へ行こう!」
そして現在。
我が家は下の子が2歳になり、離乳しオムツが外れまして。
元気いっぱい、すくすくと育っている娘を見て。
「あの時決めたことを、始めよう!」
私の中で、そんな風に思うようになっていました。
すると…『KIKI-TABI』井門Pから「相馬、南相馬を旅しませんか?」との連絡が!
テレパシ−が通じたかのようなタイミングをいただき、KIKI-TABI一行は南相馬市へ向かいました!
まず初めに降り立ったのは、南相馬市・原町区にある「萱浜(かいばま)」という海岸。
とはいえ、震災後に建設されたかなり高い防潮堤が続いていて、海を望むことはできません。
海岸線に沿って、遠く北のほうへ目を向けると、まだ建設途中の防潮堤の切れ間から、わずかに青い海が見えるばかりです。
一方、山の方をみると、津波の被害で、見渡す限り一面の更地が広がっています。
南相馬市は、津波により大きな被害を受けた場所。
津波の威力のすさまじさを、感じます。
しかし、防潮堤の内側には、盛り土がされ、工業団地を作る整備が始まっていました!
また、「海辺の森」を作ろうと、今年春に植樹式が行われ、新たな樹々たちが根を張っていました。
今月7月12日には、常磐線の「原ノ町」―「小高駅」間が運転再開!
2019年度末までに、「常磐線の全線運転開通」を予定し、インフラも徐々に復興しています。
原発事故の影響もあって、なかなか復旧工事が進まなかった場所ですが、ひとつずつ復興に向かって着実に進んでいるパワーを感じました!
「萱浜」を後にして向かったのは、南相馬市にある漬物店『みそ漬処 香の蔵(こうのくら)』。
昭和15年から続く老舗で、店内には有名な「相馬きゅうり漬け」をはじめ、伝統の「みそ漬け」が並んでいます。
ですが、よ~く見ると…
安田:え!?︎ ク、クリームチーズのみそ漬けっ!?
なんと、「クリームチーズのみそ漬け」「あん肝のみそ漬け」など、珍しいみそ漬けも並んでいて、ビックリ!
出迎えて下さったのは、マネージャー・岩井哲也さん。
岩井さん:どうぞ、試食してみてくださいね。今ですね、うちの店で「クリームチーズのみそ漬け」は、1番人気なんですよ~!
口にいれると…
安田:あら~♪おいしい!
チーズのコクと、とろ~りと広がるみその甘さ!
これはサラダにトッピングしたり、パンにのせてもおいしいかも♪
岩井さん:「あん肝のみそ漬け」は、お酒に合いますよ~。
安田:あー!いいですねー!パクッ!キューっ!とね!ね!
…なんだか、初めて会ったような気がしない岩井さん(笑)。
とにかく元気で明るい方なんです!
そんな岩井さんが、震災当時のことを話してくれました。
岩井さん:このあたりは、震災で大きな被害を受けました。
震災直後はみんな避難して、街はもぬけのカラになりました。
私も当時は避難していたんですが…「早く店に戻って、店を開けたい」という一心で、震災から
間もなくして店を再開したんです。
でも、原発の影響で風評被害も強くてですね、お客さんがぜんぜん来なくて。
「じゃあ時間もあるし、何か新商品でも作ろう!」と生まれたのが、「クリームチーズのみそ漬け」なんです。
「あの時間があったからこそ、お客様に愛される新商品が生まれたんだ」って言えるようにしていきたいですね。
そんな岩井さんを支えたのは、お客さんからの励ましの手紙。
岩井さんは、お客さんから届いた手紙、メール、FAXを、取材中も大切に胸に抱えていました。
岩井さん:全国のみなさんに、「南相馬は元気ですよー!」と発信していきたいですね。
それと同時に、やっぱり、ここに暮らす南相馬のみんなに、元気を届けたいんです。
震災でいろいろなものを無くして、今も悲しみに沈んでいる人もたくさんいます。
でも私は、南相馬のみんなに、「元気出していこうよ!」と伝えたいんです。
私たちが元気を出していかないと、ですから!
さて、南相馬から北上して、相馬市へ向かいます。
まず訪れたのは、相馬の観光拠点としてOPENしたばかりの「千客万来館」。
相馬市の観光・宿泊情報を案内してもらえる場所です。
また、10名以上のグループには、スタッフが相馬市内を案内してくれるサービスも始めているんだそうです。
出迎えてくださったのは、相馬市・企画政策部長の宇佐見清さん。
宇佐見さん:相馬市は、東日本大震災で大津波の被害を受け、458名の方が亡くなられました。
津波は海岸から約3.7km離れた国道6号バイパスまで到達し、市内の農地の40%が冠水したほか、原釜・ 尾浜地区、磯部地区などの集落が、波にのみ込まれました。
そこから1歩ずつ、復興への道を歩んできました。
風評被害は、今でも感じていまして、農産物の値段は下がったままです。
水産物においては、まだ試験操業という形でして、獲れる量が限られています。
でもそんな中、「松川浦」の宿泊施設は復興してきていますし、
今年は7月23日から3日間、相馬・南相馬の復興のシンボルとも言われている「相馬野馬追(そうまのまおい)」が行われます。
「相馬野馬追(そうまのまおい)」とは、千年以上の伝統を誇る、世界最大級の馬の祭り。
「甲冑競馬」と「神旗争奪戦」、そして街を騎馬武者が行進する「お行列」などの神事からなる祭りで、国の重要無形民族文化財にも指定されています。
まずは、「相馬野馬追」の出陣の場所、「中村神社」を案内していただきました。
境内に入ると、空気が変わります。
安田:ああ、ここは神聖な場所なんだな…。
と、背筋がスッと伸びる思いに。
宇佐見さん:「相馬野馬追」は、その名の通り、野生の馬を追って、捕えた馬を奉納したことから始まったと言われています。
また、野馬を追い捕える軍事訓練としても受け継がれてきました。
祭りの日は、先祖伝来の甲冑に身を固めた500騎あまりの騎馬武者が、この「中村神社」に集います。
総大将を中心とした「出陣式」が行われ、騎馬隊は南相馬市鹿島区を目指して街の中を一巡します。
まるで戦国絵巻さながらの光景を見ていただくことができますよ。
先ほどの「千客万来館」で、資料映像を見せていただいたのですが…
その迫力たるや、圧巻です!
安田:今年もこの中村神社から、「相馬野馬追」が始まるんだな…!
そう思うと、ブルッと武者震いが。
続いて、30年間、馬に乗り続けているという「相馬野馬追 宇多郷騎馬会」の大森新一さんに、お話伺いました。
大森さん:「相馬野馬追」は、相馬の誇りです。
参加するには、鍛錬が必要です。身体作りはもちろん、精神も鍛えて当日に臨みます。
先祖から受け継いだものを、後世に伝えていく責任も背負いながら馬に乗るんです。
見ていただくのはどなたでも大歓迎ですが、誰でも気軽に参加できるというものではなく、鍛錬が必要なんです。
そう語る横顔は、「侍」そのもの!
「相馬野馬追」に人生をかけたその熱い思いと使命感が、伝わってきます。
続いて向かったのは、「相馬市歴史資料収蔵館」。
次世代へ継承すべき、相馬の資料を保存している場所です。
ここには、400年前…相馬を襲ったある資料が残されていました。
宇佐見さん:1611年という年は「中村開府」が行われ、「中村城」に城が移された年です。
同時に「慶長地震」が起こり、津波で700人の方が亡くなった年でもあるんです。
「慶長地震」からちょうど400年後が、東日本大震災が起こった2011年です。
「この神社まで逃げれば大丈夫」といったその時の教えは、市内にも残っていたんです。
…でも、やはりね、400年の間に、忘れちゃったんですね。
今はIT化も進み、資料の保存ができるわけですから、「これからどう備えるのか?」を考えていきたいですね。
宇佐見さんの言葉から、「この2011年を語り継いでいかなくては」という、強い想いを感じました。
続いて、相馬の沿岸部「松川浦」へ向かいます。
広がっているのは、キレイな海岸線の風景。
初めて訪れた私にとっては、美しくみえるのですが…
「ホテルみなとや」を営む管野貴拓さんは、以前とは景色が変わってしまったと話します。
菅野さん:「松川浦」というくらいですから、以前は松がたくさん生い茂っていて、”小さな松島”と言われるくらいキレイな場所だったんです。
ですが、今は松が流されてしまって…
昔からこの風景を見て育ってきた私にとっては、ちょっと無機質に感じますね。
「相馬市松川浦観光振興会グループ」事務局長も務める菅野さんに、「松川浦」の美味しいグルメを教えていただきました!
菅野さん:観光地「相馬」が元気でやっていることを伝えるため、安全な食材を使い「復興チェレンジグルメ」を提供しています!
1番のオススメは「ホッキご飯定食」です。
「ホッキご飯定食」、その後いただいたのですが…
安田:うまーーーーーーい!!!!!!
ホッキのひもを入れて炊き込んだ御飯の上に、ふわふわとしたホッキがどっさりのっています。
そのホッキのやわらかさにビックリ!
わたくし、握り寿司のネタでしか食べたことがなかったので、甘辛く煮たホッキの新しいおいしさにうっとりでした♪
ホッキは2月~5月のみ獲れないだけで、長い季節にかけて味わえるそうです。
菅野さんの「ホッキは、5月からこの松川浦でも取れるようになったんですよ~!」と、うれしそうに話していました。
少しずつ獲れる海産物も戻ってきて、元気を取り戻している「松川浦」の復興を感じました!
さあ続いて向かったのは、「相馬光陽パークゴルフ場」。
なんと東京ドームの約2.5倍の敷地に、9コース81ホール!
広々とした天然芝のパークゴルフ場なんです。
クラブは貸してもらえるので、運動靴だけはいていけばOK。
500円で、1日何度回ってもよいという、太っ腹っぷり!(笑)
気持ちの良い緑の中で、子どもからから高齢者まで手軽に楽しむことができます。
そして最後に訪れたのが、「相馬光陽サッカー場」。
安田:なんてキレイなグランドなの!?すーーーごーーーーいーーーー!!!
と思わず叫んでしまうほどの美しさ。
「日本サッカー協会」と「FIFA=国際サッカー連盟」の東日本大震災復興支援活動により再整備されたサッカー場で、
天然芝コート3面と、人工芝コート1面があります。
宇佐見さん:相馬には、大きく2つの魅力があります。
1つは「相馬野馬追」の歴史文化、そして「海」「美味しい魚」があります。
でもそれにプラスして「相馬といえばサッカー!」と思ってもらえるようにしていきたいですね。
少しでも多くの方に相馬に来ていただき、スポーツを楽しんでもらえたらと願っています。
実際ね、現場は、こんなもんなんです(笑)。
みんな、こんなもんなんです(笑)。
風評被害とかいろいろ言われておりますけれど、
子どもたちも元気に地元のものを食べながら、過ごしています。
ぜひ相馬に来ていただき、こういった元気な姿を見てもらいたいです。
みなさん本当に笑顔で元気で。
来てよかったなぁ。
そう、心から思いました。
楽しかったなぁ。
美味しかったなぁ。
今、こうして旅日記を書いていても、うれしくて楽しくて。
元気がモリモリ湧いてくる!
そんな相馬・南相馬の旅になりました!
今年の「相馬野馬追(そうまのまおい)」は、まさにこのオンエアの真っ最中!
7月23日~25日までの3日間に行われます。
みなさんもぜひ、お出かけになってみてはいかがでしょうか?
私もまた、遊びに行きます!