これも名古屋の王道だがね!|旅人:片桐千晶

2019-06-19

はじめまして!キキタビ初登場、旅人の片桐千晶です。
山形県寒河江市生まれで、大好物は炊きたての白いご飯と美味しい日本酒、そして気ままなぶらり旅。
最近本格的に日本酒資格の勉強も始めて「酒蔵めぐりがしたい!珍しくて美味しい日本酒が飲みたい!」とうずうずしております。
皆さま、よろしくお願いします。

 

さてさて、記念すべき最初のキキタビ。
テーマは『これも名古屋の王道だがね!

 

 

 

 

 

 

 

 

ということで、行ってきたのは名古屋!・・・に向かっている途中から「ごめんね~ほんとごめんね~」と謝り続ける作家の河合さん(名古屋出身)。
聞けば筋金入りの雨女。そして外はどしゃぶりの雨。
「時代が違えば崇められてたと思うのよ。ほら、恵の雨を降らせる存在っていうの?うふふ」との言葉を聞きながら新幹線は名古屋駅に無事到着。

 

 

 

 

 

 

 

 

旅のスタート。目の前に立ちはだかっているのは、「ナナちゃん」
身長6m10㎝、体重600㎏の巨大人形。
名古屋では誰もが知っている待ち合わせスポットです。
いやいやいや、ナナちゃんてもっと可愛らしいのを想像してたんですけど…結構リアルだし、でかいし!しかもイベントがないときは基本的に裸なんだとか。恐るべし、名古屋。
股の間をくぐる時、思わず上を見上げちゃったのは私だけじゃないはず。

 

名古屋といえばやっぱり喫茶店の「モーニング」というサービス。
喫茶店でコーヒーを頼むとトーストやサラダがいっぱい付いてくるアレです。
最初に知ったときは衝撃でした。
なんでこんなにサービスできるの?お店の経営は大丈夫なの??と。
モーニングは名古屋発祥の文化と思いきや、なんと始まりは名古屋の北にある一宮市なんだとか。ならばと車を走らせること約30分。
到着したのは一宮市の老舗喫茶店「珈琲レオポン」

 

 

 

 

 

 

 

 

カランカランとドアを開けると、昭和レトロな雰囲気の店内。
入り口にはずらりと貼ってあるコーヒーチケット。
常連さんの名前が並んでいます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

笑顔が素敵な一宮モーニング協議会 副会長の森隆彦さんにお話を伺いました。
一宮市でモーニングが始まったのは昭和30年代。
繊維業が盛んで、織機の音が大きくて会社で打ち合わせができず喫茶店に何度も足を運ぶお客さんが増えたことから、コーヒーだけじゃ申し訳ないとピーナッツを付けたり、夕方でお腹が空いてるだろうからとゆで卵をサービスしたのが始まりなんだとか。なんというお店の気遣い!
一宮市に520店舗ほどある喫茶店。

 

 

 

 

 

 

 

 

近年はマスターがご年配になって閉めるお店も出てきているそうですが、
新しく喫茶店をやってみたい!と名乗りを上げる若者達が市の内外で増えているそう。

 

これがレオポンのモーニング。

 

 

 

 

 

 

 

 

小倉トーストやシナモントーストなど10種類のセットから選べます。
私が頼んだAセットは、コーヒー1杯300円でバタートースト、サラダ、ゆで卵がついてきます。淹れ立てのコーヒーも焼きたてのトーストも美味しい~!
これでも十分お得なのに、10枚綴りのコーヒーチケットを使えばなんと270円!ひええ、採算度外視のサービス。

 

なんでここまでできるんですか?と森さんに尋ねると
「もうね、儲け云々じゃないんですよ。お客さんにゆっくりくつろいでほしい。ここでコーヒー飲んで朝ごはん食べて1日元気に過ごしてほしい。そういうおもてなしの文化なんだよねぇ」と。

 

 

 

 

 

 

 

 

週に4日はモーニングにくるという森さん。
常連さんは大体自分の席が決まっていて、誰かがしばらく顔を見せないと体調を心配したり、ここで新しい仕事の話がまとまったりとコミュニティの場所にもなっているといいます。
時間帯によってお客さんの層が変わり、早朝はご年配の方、その後にサラリーマンなどの男性客、その後は主婦たちがモーニングを食べながらおしゃべりに花を咲かせ、休日は家族連れでにぎわうそう。

 

おもてなしの心が根付き、地元の繋がりが生まれているモーニング文化。
地元の人たちにとっては生活の一部。
なくてはならない存在なんですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に向かったのは名古屋市にあるトヨタ産業技術記念館
トリップアドバイザーの「旅好きが選ぶ!工場見学&社会科見学ランキング」で4年連続1位に輝く大人気スポットです。
案内して頂いたのは広報の榊原研一さん

 

 

 

 

 

 

 

 

愛知県が世界に誇る大企業、トヨタ。
元々は自動車ではなく、名古屋の繊維機械工場から始まりました。
赤レンガの大きな建物が並ぶ記念館。
敷地の広さはなんと東京ドームほど。広い!
繊維機械館と自動車館の大きく2つのエリアに分かれています。

 

 

 

 

 

 

 

 

明治生まれで日本を代表する発明家の一人・初代の豊田佐吉さんは、織機の研究開発に生涯を捧げトヨタグループの土台を作りました。
自分が作った機械の性能を確かめるためわざわざ糸作りから始めるというこだわりぶりです。

 

 

 

 

 

 

 

 

ここでは綿から糸を紡ぐ体験ができたり、昔話に出てくるようなぎっこんばったんと音がする木造織り機が自動機械に進歩していく過程を間近で見ることができます。
当時実際に使われていた大型機械の実演は音と迫力がすごい!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

佐吉さん最大の発明、無停止杼換式(ひかえしき)豊田自動織機(1924年製)。
布を織るときに、途中で機械を止めずに横糸が通ったシャットルを自動で交換できるという当時としてはとても画期的なもの。
これで海外から高い評価を受けた自信が、後に自動車づくりへと繋がります。

 

 

 

 

 

 

 

 

続いて自動車館へ。
初代・佐吉さんの息子でトヨタ自動車を誕生させた豊田喜一郎さんは、もともとは豊田紡織の機械エンジニア。
しかし視察に訪れたNYで街中を車が行き交う様子を目の当たりにし、
「これからは自動車の時代が来る!」と衝撃を受け、初めての国産自動車の開発を決意しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自転車に付ける小型エンジンの開発に始まり、材料の鉄の開発、海外車の分解…。何度も試作と失敗を重ね、1935年にようやく念願の初の国産乗用車の試作車が完成。それがこの「トヨダAA型」。

 

 

 

 

 

 

 

 

美しくて上品な曲線と輝き。カッコいい!オシャレ!
当時の価格で1台3,350円。今の価格にするとなんと1千万円です。

 

せっかくこれから乗用車を作れるぞ!と思ったのに、軍の要望で最初に生産体制に入ったのはトラック。

 

 

 

 

 

 

 

 

開発から販売までわずか9ヶ月で、1935年の販売開始当初は故障とクレームの嵐だったそう。栄光の影にある苦難の歴史ですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

ロケに行った日はちょうど開館25周年イベントの日。
貴重なクラシックカーの走行披露がありました!

 

トヨタが1935年に最初に販売したトラック「トヨダG1型トラック」。
世界にたった1台しかありません。
鮮やかなグリーンで丸みを帯びたフォルム。荷台と座席は木製。
正面は能面を意識したデザインなんですって。
こんなお洒落なトラックが街中を走ってたなんて!

 

 

 

 

 

 

 

 

そして幕に覆われサプライズで登場したのが高級車「レクサスLFA」。
世界にわずか500台しか無く、最高速度は325キロ!
唸るようなエンジン音が大迫力でした。
他にも初代クラウンや初代のセルシオなど、クラシックカーファンにはたまらないラインナップ。沢山の親子連れや車ファンで賑わっていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

繊維機械から自動車へ。トヨタの技術の変遷が見られるこの記念館。
エントランスの中央でひときわ存在感を放っていたのが、記念館のシンボル「環状織機」(1906年発明)。

 

 

 

 

 

 

 

 

当時、世界19カ国で特許を取得し「夢の織機」とも言われましたが、初代の豊田佐吉さんは「人が四六時中見ていないと途中で糸が切れてしまう。これでは完成品とは言えない!」と商品化をあきらめたのだとか。
たとえ時間とお金をかけて開発したものでも、納得のいかない不完全な商品は決して世に出さない。
トヨタに脈々と受け継がれるものづくりへのプライドを感じることができる施設でした。

 

 

さて、お腹も空いてきたところで向かったのは食べ歩きで有名な「大須商店街」。赤とゴールドの看板が目を引きます。

 

 

 

 

 

 

 

 

江戸時代に名古屋城の築城に伴って武家屋敷や神社仏閣など多くのものが清洲から名古屋に移されました。

 

 

 

 


大須観音(北野山 真福寺 寶生院)

 

 

 

 

 

大須商店街も、大須観音がこの地に移転してきたことでこの一帯が門前町として賑わったのが始まりとされています。
大須商店街は9つもの商店街が合わさっている巨大な商店街。

 

 

 

 

 

 

 

 

エリア全体ではなんと1,200店舗も。
大須は、秋葉原や大阪の日本橋と並ぶ日本三大電気街のひとつなんですって。
この日は降り続く雨にも関わらず、老若男女沢山のお客さんで賑わっていました。アーケードで繋がっているから雨の日でも安心して買い物を楽しめます。

 

早速、エリアの中央にある万松寺通りをてくてく。
見つけたのは「納屋橋まんじゅう万松庵」。

 

 

 

 

 

 

 

 

明治19年創業の老舗和菓子店です。
ここでしか食べられないという揚げまん棒

 

 

 

 

 

 

 

 

お店名物の納屋橋まんじゅうを丸ごとドーナツ生地に包んで揚げてあります。
見た目はまん丸なアメリカンドッグみたいで、野球ボールくらいの大きさがあります。
一口食べると、外サックリ、中の生地はふわふわ。揚げた熱で中に入ってるおまんじゅうのあんこがとろける~。美味しい!幸せ!
片手で食べられるから食べ歩きにぴったりです。

 

続いて見つけたのはドローンを売るお店。
商店街にドローンショップ。うーん、時代は進んでますなぁ。
小学生の小さい男の子が店内で体験操縦していましたが、その飛行の安定感たるや。うーん、時代!
着物屋の店頭に並ぶ浴衣(仕立て上がり)はなんと2,000円。
安いよ大須商店街!

 

 

 

 

 

 

 

 

歩いていると、すれ違う若者が手にしているのはみんなタピオカジュースやチーズドック。流行ってますね~
中学生くらいの男女6人が恥ずかしそうにグループデートしている姿を見て、甘酸っぱい気持ちになった片桐です。

 

万松寺通りを抜けて、今度は大須観音通りへ。
色んな種類の生の果物をその場で搾ってジュースにしてくれるFrutta di Frutta(フルッタジフルッタ)でスイカジュースを。

 

 

 

 

 

 

 

 

飲んだらもう、スイカそのまんま!
歩き続けて乾いた喉に、自然な甘さが沁みわたる~!
雨だったので100円サービスなのも嬉しいところ。
生のフルーツたっぷりのクレープも大人気のお店です。

 

続いて見つけたのは「串八丁 どて八丁」の大きな文字。
真っ赤な壁が目を引くお店。

 

 

 

 

 

 

 

 

ここでは名古屋名物のどて串やみそ串カツ、手羽先が手軽に食べられます。
注文したのはお店一番のおすすめ「みそ串カツ」。
揚げたての串カツを、コクのある八丁味噌のたれにたっぷり浸して頂きます。

 

 

 

 

 

 

 

 

湯気があがる熱々を一口・・・
んんー!サクサクのカツに甘めのみそだれが染みて美味しい!
豚肉も柔らかくて、噛むとじゅわっと旨味とみそだれのコクのある甘みが広がります。これは何本でもいけちゃいそう。そして絶対ビールに合うなぁ

 

商店街を抜けるとそこは大須観音。
雨にも関わらず地元の方がたくさん参拝に来ていました。
この門前町から始まった大須商店街は見所がいっぱい。
他の通りにも、鶏の丸焼きが名物のブラジル料理店やベトナム料理、タイ料理、イタリアの本格ピッツァなど、多国籍なお店が集まるエリアがあったり、老舗と新しいお店(しかもジャンルもバラバラ)が混在して独特の賑わいを生み出していました。
大須商店街は、食べて買い物して1日中めいっぱい楽しめるスポットです。

 

お腹も満たされたところで、次なる目的地に向かって車を走らせます。
「名古屋ってほんと道が広い!」
片側4車線、5車線の道路が沢山。私は怖くて運転できないな~(汗)
真ん中に公園を挟んで、道幅がなんと100mもある「100m道路」も通ってきました。名古屋は土地の使い方も贅沢だがや~

 

車を走らせること30分程。
「桶狭間」という名前の交差点に興奮しながら曲がると
「有松工芸 濱忠」に到着。

 

 

 

 

 

 

 

 

名古屋市の南東部に位置する有松は、慶長13年(1608年)東海道筋に生まれ、絞りの名産地として栄えました。
国の「重要伝統的建造物群保存地区」に指定され、江戸時代からの街並みが今も残っている歴史の風情漂う町です。

 

お話を伺ったのは、有松しぼりの老舗「有松工芸 濱忠」のご主人、濱島正継さん。ご自分で染めた有松しぼりのシャツがお似合いです。

 

 

 

 

 

 

 

 

濱忠はなんと創業200年!濱島さんは7代目です。
下のお名前が「正継」さん。「正」式に「継」ぐ。
ご両親の願いを感じます。

 

400年の歴史がある有松しぼり。
始まったきっかけは名古屋城の築城でした。
城を作るために九州からたくさんの職人や商人が集められ、彼らが持ち込んだ大量の品の中に大陸からやってきた絞りの衣類や雑貨があり、有松でも真似て絞りの手ぬぐいを作り始めたのが始まりだそう。
旅人がお土産として買い求め、東海道名物として全国に知れ渡り、尾張徳川家の保護もあって発展しました。
全国各地にある絞りの技術はこの有松から広まっていったそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

今でも国産の絞り製品の90%以上が有松産。
有松絞りの技法はなんと100種類!世界一の数だそうです。
そしてこの地区の方は昔から手先を使う絞りの仕事をしていたため、元気に長生きする方が多いとのこと。
なんと、あの100歳の双子の姉妹で話題になった!きんさん・ぎんさんも有松絞りの内職をしていたそう。納得!

 

私も早速有松絞りを体験させて頂くことに。
絞り初体験。基本の「巻き上げ絞り」に挑戦です。
布の内側につまようじやスーパーボールをあて、糸でくくり付けて模様の部分を作っていきます。
昔は豆を使っていたことから「まめしぼり」という言葉が生まれたそう。
なるほど~
若干ロケの時間が押していて、手元が焦る焦る(笑)

 

 

 

 

 

 

 

 

集中して作業すること約10分。
出来た布を60℃に温めた染料に付けて染めていきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

服に染料が付いたらもう落ちない、割り切って絞りにしちゃうしかないねぇと笑う濱島さんの話を聞いて、2歩3歩と後ずさりする作家の河合さん(白ズボン着用)。

 

液に付けて数分。水洗いして糸をほどくと…

 

 

 

 

 

 

 

 

おおおおお!出来てる!!ちゃんと出来てる!やった―――!!
片桐初しぼり、大成功です!(お酒みたい。笑)
濱島さんから「完璧!」とのお褒めの言葉も頂きました。

 

最近では外国人のお客さんも増えているそう。
ハンカチや手ぬぐい、トートバッグなどを絞りで染めて、自分だけのオリジナル作品を作ることが出来ます。旅の良い思い出になりますね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回は「これも名古屋の王道だがね!」をテーマに、
王道の名古屋グルメを楽しみながら、古き良きものづくりの文化にも触れた旅。
新しいものと古いものが混在して独特の賑わいが生まれている名古屋の面白さを体感しました。
かつてアナウンサー採用試験で初めて名古屋に来て、一瞬で落ちたという苦い思い出は完全に払拭(笑)。楽しい思い出の街に変わりました!
次はディープな名古屋も知りたいな~!

 

【名古屋グルメ・番外編】
名古屋に来たら名古屋めし!食べたいものがありすぎる!
ということで放送にはのっていませんが、堪能した名古屋グルメをご紹介。
高校時代は名古屋城でエレベーターガールのアルバイト、実家は喫茶店なのに香りを嗅ぎすぎてコーヒーが苦手になったという驚きの引き出しをパカパカ披露してくれる作家・河合さんのイチオシの名古屋めしです。

 

「コンパル」のエビフライサンド

 

 

 

 

 

 

 

 

戦後まもない昭和22年に創業。名古屋の喫茶店文化を牽引してきたコンパル。
このエビフライサンドは放送局のケータリングでも大人気。
タレントさんにもファンが多い逸品だそう。
サクサクジューシーなエビフライにタルタルソースが合う!
たっぷり挟まれたキャベツと卵も嬉しい。
河合さんの名古屋列伝を聞きながらパクパク食べちゃう。
そしてアイスコーヒーが独特。
濃縮したホットコーヒーを氷の中に投入。コクがあって美味しい~

 

 

 

 

 

 

 

 

「風来坊」の手羽先

 

 

 

 

 

 

 

 

爽やかなお兄さんが笑顔で手羽先を持つ、食べ方の説明書が置いてあります。
河合さん「30本はいけるよね?あとで追加すればいいし~」
え、4人だけどそんなに頼むの!?…と思いきや、胡椒がきいてて甘めの手羽先はほんとにどんどんいけちゃう。
熱々ジューシーな手羽先をほおばって、冷たいビールで流し込む。最高。

 

帰りの新幹線に乗る前に滑り込みで食べられたみそかつ定食

 

 

 

 

 

 

 

 

これこれ!衣サクサク、中はふっくら柔らかいとんかつに甘めの濃厚なみそだれがたっぷり。白いご飯にもビールにも合う!あ~幸せ~~!

 

…と、最後の最後まで名古屋を満喫してきましたとさ。
帰りの新幹線はみんな爆睡でした(笑)満腹!めでたし!